社寺建築の建物は、人々が手を合わせ御祈りを捧げるご本尊をお守りするためのものであり「自然と手が合わさる」そんな雰囲気を醸し出す容姿が必要です。
美しさ・剛健さ・優しさ・おおらかさ・厳格さなど、見る者がその時々の感情で受け取る印象と、見入る事によりその奥の感性に響く「無」を引き出す表現を心掛けています。
緻密な打ち合わせにより野地線の確認や垂木位置を決定し、瓦施工前の最重要課題である野地作りを行います。
役物瓦を選別機に掛け、一つ一つの瓦のくせを組み合わせ、使用場所に振り分け配置準備をします。
流し縦桟木、横桟木、縦桟木の順に施工し下地が完成します。
屋根の瓦割り付けに準じ木面戸材の加工・取り付けを行います。
瓦が屋根全体に揚げられ、建物全体に荷が掛けられます。
平唐草軒瓦、平瓦、巴瓦の順に、軒周りより施工していきます。
本平瓦・本葺素丸瓦の施工は1枚ずつ横桟に引っ掛ける爪と、左右に有る縦桟木に固定され、強度に優れた釘やビスにて固定します。
素丸瓦も腐食しにくい銅線にて固定します。
向拝の縋る破風部分や全体の平葺きが終了後、箕の甲の野地作りと掛け瓦の施工に入ります。
瓦・葺き土の重さを破風板に掛けない様、乾式工法にて箕の甲の役瓦を施工します。
全ての役瓦は野地より1枚につき3か所又は2か所を乾式固定します。
地葺き(平瓦・丸瓦の施工)、入母屋破風回り箕の甲が終了後、棟の施工に移ります。
棟に据えられる鬼瓦も御寺院様のご意向をもとに、宗派・建築様式・時代考証・寺院の歴史・地域性等を考慮し決めていきます。
弊社では箱棟による下地と耐震補強材を取り付け、1枚ずつ野地にホルマル銅線とステンレス釘、固定材には南蛮漆喰を使用し積み上げます。
また積み上げは文化材でも採用されている鳥居による施工法を採用し、建物に合った曲線を作り上げます。
美しい棟の線は全て計算され、技能と技術が融合して初めて作り出されます。
美しさと剛健さが必要となる降り棟は雨や地震から守る為、補強を行います。
力強い曲率である放物線や懸垂線を棟の仕上げ線とする為、現寸図により仕上げ線を算出し鳥居による施工法にて施工されます。
隅棟と稚児棟は鳳凰が翼を広げる様に隅先が羽先の様に美しい曲率で仕上げなければなりません。
一つの棟で決められる美しく仕上げる為の”屋根納まりの法”は50か所以上にも及び、それら全てが計算され整い初めて「美しさ」が表現されます。